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欧州連合はその典型で、エネルギー共同体といってもよく、アメリカにしても電力でのカナダとの強い結び付きがあり、日本だけが「孤島」という特別な存在ということができる。
サハリン・プロジェクトはこの状態を打破しようというものといえるのかもしれない。
パイプラインと天然ガスという、モノによっての媒介とはいえ、外国と直結することは心理的な面を含めてわが国のエネルギー情勢に対して大きな、場合によっては決定なインパクトを与える可能性もある。
このサハリン・プロジェクトが具体化に向けて一歩踏み出した。
九九年四月末、石油資源開発会社、伊藤忠商事、丸紅の三社によって、「日本サハリンパイプライン調査企画」会社がスタートした。
メジャー、エクソンの子会社「エクソン・ジャパン・パイプライン」杜との聞で、事業化のための調査に関する協定が結ぼれたことによる。
メジャーも加わっての一大国際事業が始動したわけだ。
調査の内容は、@最適パイプライン・ルートとその経済性評価、A北海道・稚内から新潟までの約千三百キロ聞の調査など。
調査には三年程度かかるとされているが、天然ガスは、エクソンがオペレーターと・なって計画しているサハリン・プロジェクトIと呼ばれるサハリンの大陸棚で生産される予定だ。
構想では、天然ガスをサハリン北部からまずパイプラインでサハリン南端部に運び、さらに海底パイプラインで北海道を経由して日本海側の新潟まで運ぼうというもの。
パイプラインはサハリン島内約六百キロ、サハリンから新潟まで約千三百キロで総延長はざっと千九百キロとなる。
総工費は二千五百億円とも五千億円ともいわれている。
実現すれば、日本にとってもアジアにとっても国際パイプライン第一号と・なる。
こうして見るとバラ色の構想・プロジェクトという印象を持ってしまうのだが、問題も山済み。
確かに一歩は踏み出したものの、難航は必至とされる。
最大の壁は需要だ。
この計画では導入される天然ガスはLNG換算で年間六百万トンとなる。
この大量の天然ガスを誰が買うのか。
当然、想定される需要家は電力業界、都市ガス業界ということになるが、電力業界はクールな反応を示している。
このプロジェクトに対する公式意見は出していないが、「エネルギー供給ソースの多様化という点で検討の対象である」とはいうものの、「価格などの具体的な内容の提示がない段階では、評価のしょうがない」という姿勢のようだ。
しかし、実情はもっと複雑だ。
このサハリン・プロジェクトに関連して、囲内の基幹ガスパイプライン構想が論議され始めており、これが具体的にサハリン・プロジェクトに関連して動きだせば、その影響は計り知れないからだ。
国内パイプライン計画は構想段階ではあるが、サハリン・プロジェクトの前提という意見もあり、提案はいくつかすでに出されている。
日本ガス協会による東京、名古屋、大阪を結ぶ日本三大都市圏連係パイプライン構想を代表に、日本エネルギー経済研究所による海外を含むパイプライン構想、さらには三菱総合研究所による日本国土縦貫天然ガスパイプライン構想などがその例である。
それぞれ多少の違いはあるが、囲内に基幹となる天然ガスパイプライン網を構築しようという点では一致している。
当然、資金規模は一兆円をはるかに超える巨大プロジェクトである。
まだ構想段階ではあるのだが、今後、論議の祖上に乗ってくる可能性は強いとみていい。
そもそもサハリン・プロジェクトの黒子役は通産省といっていいだろう。
通産省は「パイプラインができれば、これによって、一般企業によるIPPがパイプラインにぶらさがるような形で電力市場への参入、電力料金の引きあげが期待できる」という考えがある。
確かに北海ガスを持つイギリスでは、比較的簡単に建設ができるガス火力発電が自由化の推進役となったことは事実だ。
しかし、これが最近行き過ぎ、ブレア政権はその弊害からガス火力発電の抑制に乗り出している状況にあることが見逃されている。
需要が自然に付くのであれば問題なさそうだが、通産省の思惑はあくまで結果論、イギリスで成功したからといって、日本でも同様ということにはならず、生産サイドの決断は相当難しそうだ。
ガスは生産した、パイプラインもできた、しかし、需要がないということにでも・なれば、プロジェクトは窮地に陥る。
安定した需要がプロジェクト成功のカギを握る。
IPPはあくまで推進のための一種の則待値でしかないともいわれる。
しかし、その電力業界は日下の崇気低迷で屯力需要の見通しが立たず、すでにLNGの安定引き取りにも若干の陰りが出てきているとされ、サハリン・プロジェクトに安定的引き取りに積極的に名乗り出られるような状況には全くないようだ。
それに自由化のための合理化を急速に進めるなかで、撹乱要因になる恐れもあるパイプラインに消極的、国内基幹パイプライン網の同時推進には明確に反対していることも確か。
それならば都市ガス業界はといえば、これは複雑。
天然ガスで市場拡大を考える企業があるA方、LNG導入でト分というところもあり、賛否が二分しているとされる。
一円以上ある中小都市ガス会社にいたっては,それによって半ば強制的な阿編に追い込まれることを恐れるところも少なくないようだ。
一方、無関係にみえる石油業界にとっても大きな脅威となる。
北海道、東北地方は稼ぎ頭の灯油の大きな市場。
成り行きによっては、それでなくとも厳しい経営環境が一段と悪化してしまう。
電力用重油の供給にも問題が出てくる可能性もあり、メリットは皆無といってもよさそうだ。
「反対ばかりが能ではないが、その影響はあまりにも大きく、反対せざるを得ないと思う」という。
それに巨額の資金問題にしても今、どこが出せるのか。
需要業界は尻込みしており、またも公的資金頼りの国家事業にするのか。
原子力導入より大きな意味を持つという声もあるこのパイプライン計画は、日本にとって最大級の二十一世紀の選択のひとつといっても過言ではなさそうだ。
実は日本はパイプライン後進国である。
欧米に比較するとその違いは歴然であり、国内基幹パイプライン網の構築は将来に向けての大きな課題であることはまちがいない。
これに比べて欧米、特に欧州の基幹パイプラインの整備には目を見張るものがある。
当初はオランダなどの国内ガス田を中心に広がったとされる基幹パイプライン網だが、今では網の目のように張り巡らされ、EUの地球温暖化問題への強気な計画を支える原動力になっているとの評価もある。
欧州のパイプライン網の特色のひとつはその広がりと同時に、海外を含めての巨大供給源の多様さにある。
供給源は大きくは一三域内では、北海ガス田であり、もうひとつは西シベリアにほぼ完全な基幹パイプライン網を築き上げた。
すでにアフリカからはもう一方のルートがジブラルタル海峡を渡り、また、域内ではイギリスと大陸を結ぶパイプラインもできている。
さらには北欧で拡充・延長工事が進捗中であり、欧州でエネルギー安全保障問題があまり議論されない、ひとつの理由になっているという見方もある。
供給ソースが大供給源だけで三か所あるのに加えて、備蓄体制も確立しており、岩塩層による備蓄機能が整備されている。
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